一覧
急いでおられる方のために、先に一覧を置きます。それぞれの中身は下に続きます。
| 観点 | 汎用の AI | 私たちの作り |
|---|---|---|
| プライバシー | 預けた情報の行き先を利用者が確かめられない | 要配慮の項目はアプリの層で暗号化。鍵はアプリの外に出ない |
| 個別性 | 誰に対しても同じ一般解 | 六層のうち一・三・五・六をその人ごとに作り替える |
| 日本語 | 目の前の一文を、文字どおりに読む | 言い回しの変化・断り方の癖・敬語の距離まで、時間をかけて読む |
| 言葉と数字 | 別々に扱う | 時刻を土台に同じ土俵へ載せて相関にかける |
| 領域 | 聞かれた領域だけ答える | 意識・からだ・つながり・時間・貢献・資産を横断して読む |
| 記憶 | 会話が閉じれば消える | 列と型のある表に構造化して貯め、去年の同じ時期と比べられる |
| 計算 | 数字を言葉として生成する | 式で計算する。同じ材料なら必ず同じ答えが出る |
| 時点 | 学習した時点と今が混ざる | 対象期間と、その情報が使えるようになった日を分けて持つ |
| 出力の形 | 結論と説明 | 結論・根拠・確からしさ・反証条件・次に見る日を必ず添える |
| 反復 | 同じことを何度でも言う | 前に出したものを既出として渡し、繰り返させない |
| 実行 | 助言で終わる | 下書き・承認・送信まで持ち、結果を次の見立てへ戻す |
| 第三者 | 頼まれれば誰でも調べる | 手がかりのない方は調べない。私的な事柄は集めない |
| 費用 | 従量で青天井になりうる | 月ごとの上限と、実支出が常に見える口 |
プライバシーとデータ主権
健康、人間関係、資産。私たちが扱うのは、人が最も他人に渡したくない種類の情報です。 汎用の AI に打ち込んだ文章がどこへ行き、どう使われ、いつ消えるのかを、利用者の側から 確かめる手立てはありません。ここは工夫ではなく、構造で応えるべきところだと考えています。
- 項目ごとの暗号化 — 症状、人となり、価値観、連絡先、口座、相談の中身といった要配慮の列は、 データベースに入る前にアプリの層で暗号化します。データベースを直接見ても読めません
- 鍵はアプリの外に出ない — 鍵は保管庫にあり、ブラウザにも、リポジトリにも、外部のサービスにも渡しません
- 一件ずつ消せる — 「全部消す」しか無い状態を作りません。記録の一件、写真の一枚、 提案の一つを、それぞれ消せるようにしてあります
- いつでも書き出せる — 全件を機械が読める形で書き出せます。囲い込まないためです
- 学習に使わない — 預かった情報を、モデルの学習には使いません
- 読む範囲を最小にする — 連携するときも必要な範囲だけを求めます。たとえばメールは、 差出人と件名だけを見る許可から始め、本文を読む許可は本人が明示的に選んだときにだけ足します
暗号化した列は検索や並べ替えに使えません。ですから、探せるようにしておく列と、 守る列を、設計の段階で分けています。守ることと使えることを両立させるための面倒を、 先に引き受けているということです。
六層フレームワーク
私たちは、人にせよ企業にせよ、判断が成り立つまでを六つの層で捉えています。 第一層 めざすこと、第二層 汎用の知識、第三層 個別の情報と環境、第四層 解析、 第五層 打ち手、第六層 実行と検証です。
汎用の AI が強いのは第二層だけです。世の中の知識をよく知っています。 しかし、その人が何を目指しているか(第一層)、その人固有の事情と数字(第三層)、 どの器で出せば実際に使われるか(第五層)、当たったと言えるのか(第六層)は持っていません。 同じモデルを使っても出てくるものが違うのは、ここに理由があります。
| 層 | 汎用の AI | 私たちがしていること |
|---|---|---|
| 一 めざすこと | 薄い | その人の価値観・制約・使える時間とお金を常に接地する |
| 二 汎用の知識 | 厚い | ここは素直に借りる。作り替えない |
| 三 個別の情報 | 無い | 本人の記録と、一次情報から積み上げる |
| 四 解析 | 言葉で説明する | 式で計算し、確からしさを添える |
| 五 打ち手 | 一般解 | その人が現実に実行できる水準まで下ろす |
| 六 実行と検証 | 無い | やってみた結果を受け取り、次の見立てへ戻す |
考え方の全体は六層フレームワークに書いてあります。
言葉の裏にある文脈を読む — とくに日本語
日本語は、言いたいことが文字の上に出てこない言語です。主語は消え、断りは 「一度社内で検討させていただきます」になり、含みは行間に置かれます。 文字どおりに読むと、意味が反転することさえあります。
汎用の AI は日本語の文法をよく知っています。しかし扱うのは、目の前の一文です。 私たちが見ているのは、同じ人・同じ会社が時間をかけて出してきた言葉の並びです。 前に何と言っていたかを持っているので、今回の言い回しが何を意味するかを、 その人の中の変化として読めます。同じ「検討します」でも、人によって意味が違うからです。
一、言い回しの変化を、四半期ごとに並べて追う
企業の言葉には段階があります。「努めてまいります」が「検討しております」になり、 やがて「決定いたしました」になる。この移り方には型があり、 数字が動く前に、言葉のほうが先に動くことがあります。 私たちは経営者の説明と開示の文言を四半期ごとに並べ、前の期と突き合わせて、 どの言い回しがどちらへ動いたかを拾います。
消えた一文も見ます。前の期に書いてあった約束や見通しが、今期の資料から静かに落ちている。 書かれたことより、消えたことのほうが雄弁な場合があります。 一枚だけを読んでいては気づけないところです。
二、断りと含みを、断りと含みとして受け取る
日本語のやり取りは、はっきり断りません。「一度持ち帰ります」「またご連絡します」 「前向きに考えます」。これを承諾として記録してしまうと、関係の見立てがまるごと狂います。 私たちは、いただいた返信の言い回しと、そのあと実際に何が起きたか (返事が来たか、日程が決まったか、話が進んだか)を突き合わせ、 その方の断り方の癖を覚えていきます。言葉だけでは決めず、後の事実で答え合わせをする、 ということです。
三、敬語の高さは、距離のものさしになる
日本語では、相手との距離が敬語の高さに出ます。急に丁寧になった、ふいにくだけた、 宛名の書き方が変わった、結びの一文が短くなった。こうした変化は、関係が動いた印です。 私たちは文面の丁寧さを、その方との過去のやり取りと比べて見ます。 ここでも効くのは絶対値ではなく、その方の中での変化です。
四、書かれた記録を、測れる形に変える
「今日は人に会うのがつらかった」という一文は、そのままでは睡眠時間や歩数と比べられません。 私たちは、記録の中にその状態があったかどうかを 0 と 1 の系列に変え、数字と同じ土俵に載せます。 言葉を数字に翻訳するのではなく、言葉があったという事実を、時間の上の点として扱うという やり方です。ここが次の「言葉と数字を、時刻で結ぶ」(04)と「領域をまたいだ相関」(05)につながります。
五、日本語だから要る、地味な手当て
- 分かち書きがない — 語の切れ目に頼る仕組みは日本語で精度が落ちます。 私たちは語の切れ目に依存せず、文字の並びの重なりで照合しています
- 同じ人が四通りに現れる — 「山田太郎」「山田 太郎」「山田さん」「やまだたろう」。 敬称・空白・全角と半角・読みを機械的にそろえてから照合します。 それでも同姓同名は残るので、名前だけの一致では自動でまとめません
- 文字化け — 古い書き出しは別の文字コードのことがあるので、読めなければ自動で判定し直します
- 日本の記録の形 — 名刺、年賀状、LINE のトーク履歴。 日本の人間関係が実際に残っている形式を、そのまま読めるようにしてあります
六、こちらが出す日本語も、機械の日本語にしない
受け取るだけでなく、出す言葉も条件にしています。記号で飾らない(アスタリスクや 箇条書きの記号を使わない)、強調は記号ではなく言葉で行う、専門用語を並べない、 誰にでも当てはまる一般論を書かない。これは好みの問題ではなく決まりとして置いてあり、 出す直前に機械で確かめています。読んだ方が身構えない日本語であることを、 出力の要件のひとつにしている、ということです。
言葉と数字を、時刻で結ぶ
ふつう、日記に書かれた言葉と、睡眠時間や株価のような数字は、別々に扱われます。 私たちは、時刻を土台にして、文字のデータと数値のデータを同じ土俵に載せ、相関にかけます。 「今日は人に会うのがつらかった」という一文と、その日の睡眠時間、歩数、痛みの点数を、 時間の軸で結び直す、ということです。
ここを跨ぐと、本人にも、担当の医師にも見えていなかった悪化の型が出てきます。 文章は文章、数値は数値として別々に扱われるのが通例なので、片方しか持っていない事業者には 原理的に取れない見方になります。この中核の方法について、特許出願の準備を進めております。
絵に描いた話ではありません。この考え方に合わせて、2026 年 8 月に全プロダクトの日時を 時間帯つきの型にそろえ、時刻つきの出来事を残す共通の台帳を置きました。サーバの時間帯しだいで 数時間ずれる余地を消さないと、遅れを含んだ相関(今日の出来事が翌日の体調に出る、といった見方) が測れないためです。土台の工事が先に済んでいます。
領域をまたいだ相関
汎用の AI は相関を語りますが、計算はしません。私たちは、意識・からだ・つながり・時間・ 貢献・資産のそれぞれから日ごとの系列を受け取り、領域をまたいで相関を計算します。 人と会った回数と翌週の疲れ、意識の記録と腸の症状、予定の密度と気分。 片方の領域しか持っていなければ、そもそも計算できない組み合わせです。
- 各プロダクトは集約した値だけを出し合います。生のデータと鍵は、それぞれの中に留まります
- 相手の方の名前や、予定の中身は、領域をまたぐときに一切出ません
- そろっている領域だけで計算します。欠けている領域があっても止まりません
- 出すのは相関までで、相関は因果ではないことを必ず添えます。因果は仮説として、確からしさつきで出します
その人のデータが、構造をもって積み上がっている
汎用の AI は、話しかけるたびにゼロから始まります。あなたが誰で、何に困っていて、 去年の同じ時期はどうだったかを、毎回こちらから説明しなければなりません。 私たちの道具は、記録・写真・検査・会話・カレンダー・メール・機器から、 本人が手を動かさなくても情報が溜まり続けるように作ってあります。
大事なのは、溜めるだけでなく構造にして溜めることです。会話のかたまりのまま置いておくと、 読み返すことしかできません。列と型のある表に落としてはじめて、前と比べる、相関を取る、 抜けを見つける、条件で絞る、といったことができます。
構造にすることで、はじめてできるようになること
- 去年の同じ月と比べる。三日ごとに見立てを入れ替える。抜けている項目を先に埋めにいく
- 数千人の連絡先から、距離感・最後にお会いした日・専門・信頼度で絞り込む
- 同じ方が別の経路から二度入ってきたときに、機械的に一人へまとめる
- 領域をまたいだ日ごとの系列を作り、相関にかける(05「領域をまたいだ相関」)
連絡帳は「読めない形式をなくす」方向で作ってあり、名刺の写真・年賀状・スマホの連絡帳・ SNS の書き出し・トーク履歴のどれを放り込んでも、人として取り込めます。
計算は式で行い、AI に数字を作らせない
ここがいちばん大きな違いです。汎用の AI は、もっともらしい数字や、実在しない店名・施設名を 平気で出します。私たちは計算と判断を AI から取り上げ、式に置きました。 正規化した表の上で、決まった手順で計算します。同じ材料なら必ず同じ答えが出て、 どこでそうなったかを後から辿れます。しかも毎回無料です。
| 担うもの | 中身 |
|---|---|
| 決まった式 | 距離感の推定、優先度の採点、相関の計算、目標への進み具合、企業価値の算定 |
| AI | 計算の結果を人の言葉で解釈すること、仮説を立てること、その人に寄せて書くこと |
| AI にさせないこと | 数字を作ること。実在しない店名・施設名・宛先を書くこと |
作らせないための歯止めは、思想ではなく仕組みに置いてあります
- 宛先は実在する文字列だけ — メールアドレスは、公開ページに実際に出ている文字列を機械的に抜き出したものだけを使います。AI に推測させません
- 出典に無い値は捨てる — 公開情報から項目を埋めるとき、出典が検索結果に無い候補と、その出典の本文に出ていない値は、機械的に捨てます
- 四重に検算する — 企業価値は、式の再計算・値が常識の範囲か・過去の数字と整合するか・いまの時価総額と説明がつくか、の四つを通らなければ出しません
- 「判定不能」を答えとして持つ — 材料が足りないときに無理に結論を出さず、何が足りないかを言います
言い方
「作り話を減らす工夫をしています」ではなく、「数字を作れる場所を、設計から無くしてあります」と言えます。 これは後から足せるものではなく、正規化した表と決定的な計算を先に置いたからこそ言えることです。
情報が使えるようになった日を、分けて持つ
企業を見るときに効いてくる違いです。私たちは、その数字がいつの期間のものかと、 その情報が世の中で実際に使えるようになった日を、分けて保存します。 決算の数字は期末のものですが、それを誰もが読めるようになるのは何週間も後です。
これを分けずに持つと、後から出た情報を過去の判断に混ぜてしまい、 「あのとき分かったはずだ」という誤った検証をしてしまいます。汎用の AI は、 学習した時点と質問された時点が混ざるので、この区別を持てません。
出力に、検証できる形を持たせる
私たちの出力には、結論だけでなく根拠・確からしさ・反証条件・次に確認する事項が付きます。 反証条件とは「どうなればこの見立てが崩れるか」です。これを先に書いておくと、 後から当たり外れを言えるようになります。会議の場で検証できる形にしておくため、という一点です。
- 確からしさは四段階で示し、確立していることと、研究段階のこと、伝統的に言われていることを混ぜません
- 材料が足りなければ「判定保留」と言います。無理に埋めません
- 人物の評価は、AI の申告した点数ではなく、こちらの仕様で採点し直します
同じことを、二度言わない
汎用の AI は、同じことを聞けば同じ一般解を返します。私たちは、その方へこれまでに出した提案の 要旨を貯めておき、次に生成するとき「既出」として渡します。同じ内容も、言い換えただけのものも 禁じたうえで書かせます。見立ては三日ごとに入れ替わり、毎回ひとつは新しい角度が入ります。
履歴は短い文なので、これに掛かる追加の費用はほぼゼロです。初めての方には何も足さないので、 費用は変わりません。
助言で終わらず、実行と検証まで回る
汎用の AI との会話は、閉じれば終わりです。何を勧められたか、やってみたか、効いたかは どこにも残りません。私たちの道具は、そこから先を持っています。
| 段 | 実際に動いているもの |
|---|---|
| 解析 | 三日ごとに見立てを入れ替える。前回までに出したことを既出として渡す |
| 打ち手 | その人が実行できる水準まで下ろす。実在の提供者・費用の桁・確からしさを添える |
| 実行 | 受け入れたものが実行待ちに積まれ、そこから送る・会う・贈るができる |
| 検証 | やってみた・よかった・効かなかった・すごくよかった、の四段階で受け取り、次の見立てへ戻す |
外に出る行為は、下書き・承認・送信の順を必ず通ります。自動で送るのは、 本人が範囲を決めて明示的に許した場合だけです。この輪が閉じていることの意味は、時間が経つほど効きます。 使うほど材料が増え、何が効いたかの記録も増えるので、後から来た道具には追いつけない差になります。
相手の方の尊厳を、制約として持つ
私たちの道具が扱うのは、利用者ご本人だけではありません。連絡帳が扱う「相手」は第三者です。 間違った発信や過剰な詮索は、その関係そのものを壊し、取り返しがつきません。ですから、 できることを増やす前に、してはいけないことを仕組みで止めています。
- 本人を特定できる手がかりのない方は、公開情報の自動検索の対象にしません。同姓同名の別人を巻き込まないためです
- 健康、家族、信条、住所、収入といった私的な事柄は、公開情報から集めません
- 相手の弱みを使う言い回しや、操作的な文面は生成しません
- 関係をどうするかの最終判断は、常に利用者ご本人が行います
費用が見えていて、壊れない
AI を使う道具は、放っておくと費用が青天井になります。私たちは月ごとの上限を持ち、 実際にいくら使ったかが常に見えるようにしてあります。上限に達したら、その機能だけが 静かに止まり、他は動き続けます。
- 式で済むものは AI を呼びません。毎日出る提案の多くは、呼ばずに作っています(つまり無料です)
- 鍵や外部のサービスが未設定のときは、その機能だけが「準備中」に落ちます。 勝手に別のサービスへ切り替える、といったことはしません
- 途中で切れた生成は、切れた場所から続きを作って繋ぎます。黙って短い答えを返しません
汎用の AI に任せているところ
公平のために書いておきます。言葉を扱う仕事そのものは、汎用の AI のほうが優れています。 計算した結果を人の言葉で解釈すること、仮説を立てること、その方に寄せて書くこと。 ここは素直に借りていますし、モデルが良くなればそのぶん私たちの道具も良くなります。
ですから、私たちが作っているのは「AI に代わるもの」ではありません。 AI が本当に役に立つために、その周りに要るものです。 構造をもった記録、式による計算、鍵の管理、六つの層、時刻でそろえた台帳、検証の輪。 そのどれもが、モデルの賢さでは埋まらないところにあります。